ここがすごいぞ!ペルソナ5

一日一更新、六十五日目。

昨日ペルソナ5のことについて書こうとして、5を遊ぶに至るまでの経緯を書いたのだが案の定ばちばちに長くなり5を購入したところまでしか書けなかったので、今日はその続きというか、ペルソナ5というゲームのことについて書いていこうと思う。

kozarubiyori.hatenablog.com

昨日の記事に書いた通り、ペルソナシリーズは主人公たちがファンタジー世界の人間ではなく、我々の生きる現実世界と酷似した現代日本に存在する高校生であることが特徴で、そのごく普通の人間である彼らが、ひょんなことから異形の力(ペルソナ能力)を手に入れ、人知れず迫っている世界の危機と戦うことになる…というのがおおよその筋書きの物語である。

現在シリーズは1~5まで発売されており、一応彼らの存在するゲーム内「現代日本」は時系列に繋がってはいるものの、どのナンバリングタイトルから手に取っても問題なく一つの物語として完結するようになっている。(2のみ、『罪』『罰』の二本立てになっているが)

ペルソナ5のここがすごい①:街を実際に歩いているような画面の作り込みがすごい!

4がとある田舎町を舞台にしていたのに対し、5は渋谷を中心とした東京が舞台で、主人公の住まいは四軒茶屋、通っている高校は蒼山一丁目にあり、吉祥寺や秋葉原などの繁華街へも電車を使って行くことができる。その街並みのリアルさ、詳細な画面の作り込みに、まず驚かされる。

ゲーム序盤、地方からある理由で都内に居を移した主人公が、転校先に初登校する日に渋谷駅に降り立ち、「銀座線に乗り換えなくては…」という指示が出たきり、プレイヤーの自由行動パートとなり渋谷駅前に放置されるイベントがある。わたしは東京住みなので渋谷駅の周辺はよく知っているが、まずその街並みの再現度の高さに驚くとともに「ノーヒントで田園都市線から銀座線への乗り換えって、いきなりハードル高くない!?」と思った。

渋谷駅の銀座線は、地下鉄駅にもかかわらずなぜか地上3階部分に改札があるのである。初見でスムーズに銀座線にアクセスできる人間はおそらく多くないだろうし、駅の構造を知らなければ、とりあえず駅前をウロウロして案内板を探そうとするだろう。そうしてウロウロする間に、プレイヤーがゲーム内の渋谷駅周辺を見て回れる仕様になっているわけである。

地下鉄を降りた主人公が、初めて訪れる大都会・渋谷のど真ん中で呆然と立ち尽くす気持ちが追体験できる。しかも、転校初日の朝である。東京暮らしの人たちは軒並み足が速く、人を避けるのが上手い。そんな中で自分はうまくやっていけるのだろうかと不安になりながら、遅刻しないよう急いで向かわなければと焦りながら渋谷迷宮をうろつく主人公に、否応なく感情移入してしまった人は多いと思う。

これは間違いなく、ゲームだからできる体験だと思った。アニメやマンガで同様の場面を見ても、その街の広さや不安は主人公の表情から想像するしかできないけれど、ゲームだとそれはそのまま自分自身の体験になる。そして、現実の渋谷駅に実際に行ってみたとき、改めて「わあ、本当にペルソナ5そのままだ…」と感動してしまうのだ。東京住みのわたしですら今でも渋谷に降り立つたび「本当にペルソナ5のままだよなぁ…」と、放課後の渋谷周辺で流れるペルソナ5のBGMをSpotifyで再生しながらつい主人公になりきって街を歩いてみたりしてしまう。

これは今年聖地巡礼したときの三軒茶屋

open.spotify.com

ペルソナ5のここがすごい②:ストーリーの見せ方が上手い!

ペルソナ5の主人公は、普通の高校生として蒼山一丁目にある私立秀仁学園に通い様々な人たちと交流するかたわら、人の心を盗む「怪盗」として異世界で異形と戦う二重生活を送ることになる。これだけで充分面白そうなゲームなのに、話はこれでは終わらない。

ゲームを始めてすぐのチュートリアル、主人公はカジノのような建物内で怪盗として暗躍し、怪物相手に大捕り物を演じているのだが、その後捕縛され、警察から厳しい尋問を受ける羽目になる。そう、始まって30分くらいでもう捕まっちゃうのである。

やがて切れ者そうな女検察官が登場し、主人公相手に取り調べを始める。そして語られる主人公の過去…一体この平凡そうな高校生が、どうして怪盗を演じることになったのだろうか?

というところから4月になり、主人公が東京へやってきた経緯が語られる。つまりプレイヤーは、「警察に捕まった主人公が取り調べで語った内容を追体験する」形でストーリーを追っていくのである。この流れが非常に斬新だった。こういうタイプの物語は数あれど、それをゲームでやる、というのが新しく感じた。

ゲームでは我々プレイヤーは主人公キャラクターを操作し、彼/彼女になりきってその世界を生きる。けれど、主人公たちがそれまでどんな人生を送ってきたのか、他の登場人物たちとどんな関係なのか、主人公なら当然知っているはずのことを、我々プレイヤーは知らない。その構図を逆手に取るような演出だったと思う。

主人公を取り調べる検察官とともに、わたしたちは主人公の語る事件の真相に迫っていく。ゲームを遊び進めるうちに、4月から始まるこの物語が「捕まってから語られている追体験」であることをつい忘れて楽しんでしまうのだが、ストーリーが進行するタイミングで現実に引き戻されるように取り調べのシーンが差し挟まれ、主人公と検察官のやりとりが展開される。

そして、その取り調べの中でとうとう「カジノに侵入した」話が語られるとき、追体験であった物語が取り調べ中の現在とついにリンクするのである。そこで、エンディングルートの分岐点がやってくる。語られてきた物語の全容を知ったプレイヤーの選択によって、主人公の運命、ないし世界の命運が左右される。

ペルソナ4で一度栄華を極めたアトラスが、次なるナンバリングタイトルとして素晴らしい完成度で打ち出してきた5。世界に賞賛されるに相応しい圧巻のストーリーだった。

ペルソナ5のここがすごい③:スタイリッシュすぎるUIと音楽

アトラスのUI(ユーザーインターフェース)はとにかくすごい。とくにペルソナ5以降は、メニュー画面への移行モーションがカッコよくて見ているだけでゲーム世界に浸れるし、なんだかゲームを遊んでいる自分までカッコよくなったような錯覚を抱かせるほどである。

ただカッコいいというだけでなく、スタイリッシュな中にも必要な情報が分かりやすいよう整理された画面配置や、ボタンひとつで必要なアイテムにアクセスできる配慮など、単なる雰囲気出しではなく、ゲームをストレスなく遊ぶための工夫が凝らされている。まだの人はぜひ一度触ってみてほしい、デザインの匠を感じるポイントである。

www.famitsu.com

そして音楽!近年のペルソナといえば代名詞にもなっている歌入りのBGMだが、これがまた作品世界の魅力を更に引き立てている。

ざっくり表現すると、ペルソナ3はクールなロック、ペルソナ4はかわいいポップときて、ペルソナ5は大人なジャズである。東京の人混みを背景に日常を過ごしている時に流れる雑踏を思わせる賑やかな曲や、敵の監視の目が光るパレス(ダンジョン)に侵入しているときの緊張感溢れる曲、そして、運命の決戦を前に主人公たちの決意があらわれているかのような高揚感に満ちた曲。歌い手のLynさんの伸びやかなボーカルは、華やかだけれど決してゲームプレイの邪魔にならず、ストーリーを飾り立てる。ライブで聴くと、圧倒的声量とともにゲームの内容が鮮やかに思い出され、思わず目頭が熱くなってしまう。

サントラだけでも一度聴いてみていただければ、これ本当にゲーム音楽なの?と驚くこと請け合いです。

open.spotify.com

気付けば3000字をとっくに超えていた。これまで書いた日記で一番長い記事になったかもしれない。これ日記か?

とにかく最高のゲーム体験ができるし、できればペルソナ5は特に、ネタバレを見ずに遊んでほしいと思う。序盤の出来事だしもう8年前のゲームだしで、「開始30分で捕まる」などのネタバレを書いてしまったが、本当ならそれも知らずに遊んでほしいくらいである。

いろんな配信者がゲーム実況をしていることも多いペルソナ5だけど、上記のとおり、自分自身で操作するから余計に主人公、他のキャラクターたちに感情移入できるし、プレイヤーによって思い入れのあるキャラも変わってくる。ファン同士で話していると、自分しか体験していない個人的な出来事でなく、他のプレイヤーたちも自分と同じように主人公たちの物語を追体験しているのが不思議に思えてくるくらい、個人的な感情の載る作品である。

竜司と一緒に怒り、杏ちゃんと一緒に笑い、祐介と一緒に悩み、真と一緒に考え、双葉と一緒に泣き、春ちゃんと一緒に苦しんだのが、自分だけでなかったんだなあ…と思ってしまうくらい、登場人物たちが仲間として身近に感じられる作品である。

8年前のアトラスさん、傑作をありがとう。『メタファー』にも期待しています。

persona5.jp