劇場版『きのう何食べた?』

めっちゃ泣きました Twitterに書いたけどだいたい15分おきくらいに泣いてた

まず最初のオープニング曲で泣いた 元々ドラマでも印象的なオープニングだったけど、仲良く京都旅行を楽しむ二人の笑顔が本当に愛しくて…

その前の話もあっただけに、ちゃんと京都デート楽しめて良かったねケンジ…と、あんなにゲイバレ嫌がってたシロさんが旅先でケンジと顔を近づけて笑い合ってる…というエモみでたまらず、また優しく素朴なメロディーに二人のささやかな旅行のメモリーが乗っかって、愛しくて切なくて、もう…(一泣き)

シロさんの実家にご挨拶に行ったあと、「好きな人のご両親に会えるなんて夢みたい」と言って泣いてしまったケンジが、もう会いたくないって言われちゃうのつらい…

けど、ケンジも分かってるんだよね シロさんのご両親の考え方も生きてきた時代を考えたら仕方ないことで、ご両親もシロさんのことを愛しているからこそ、そうなってしまったってことを… 

彼らは彼らなりにシロさんのことを(ないし、シロさんと共にいるケンジのこともたぶん)考えた結果なのが、つらいけどそれしかないよなって感じで… でもきっぱりと正月帰らないって言いつつ、肉団子の作り方を教わりに行ったり、まめに実家帰ろうって思えるシロさんが、偉すぎるな…って自分の身に置き換えてみて本当に思いました 大事にしてあげてねって言えるケンジも、シロさんも、どっちも偉い 見習いたいですね…

わたしは原作にあるシロさんのご両親の「お隣の家の子どもを孫の代わりに可愛がることにしたんだな」というあのエピソードが、少し救われたような気持ちになりつつも若干モヤつく絶妙な具合の落としどころで、流石はよしなが先生だなあと思っていたんですが、そのエピソードは挟まれませんでしたね この後、ドラマで続編をやったら出てくるのかな?(やってほしい)

『何食べ』はちゃんと登場人物に背景があって、ワガママ放題でせっかく料理教えに来てくれた佳代子さんにも嫌味を言ってみせるワタルくんにも、そうせざるを得ない彼なりの事情を感じさせるというか…

彼はたしか、父親が社長で英才教育を受けさせられていたんだけど、それが嫌で家を飛び出したっていう子でしたよね だから彼は「家に縛られるなんてバッカみたい」と言うしかない 安定が嫌でギリギリでもいいから自分で選んだ生き方をしたい、その決意と危うさが、彼の魅力でもあるんだよなって…

ケンシロの安定感に比べると大ちゃんとジルベールはまだまだ若くて危なっかしいカップルに見えるけど、その二人にも歴史があって、衝突を繰り返してちょうどいいところを探っていってて、なんか… 恋愛や夫婦や日常、の形に正解はなくて、それぞれにそれぞれの天国と地獄があって、それでいい、同じじゃなくていい、というメッセージを感じました わたしは

泣いちゃったところはいっぱいあったんだけど、やっぱりシロさんは本当にケンジが好きなんだなあって思うたびに泣けたな… これは私見ですけど、シロさんにとってケンジはもう恋人というより家族って感じで、恋というより愛なんだと思います

どちらかというとこれまでの人生では、家族というより恋人、愛より恋って感じの(ちょい悪な)相手ばかり選んできたシロさんが、ケンジに出会えてよかったって本当に思ったし、よしなが先生の同人誌(ケンジとシロさん1巻)で、自分ケンシロのセクシャルな表現読めるかな…って不安がりながら読んで号泣した時のことを思い出した 未読の方ぜひ読んでみてください めっちゃ「この二人が出会えてよかった…」って思えるので…

しかし改めてよしなが先生凄いなって思ったのは、ケンジのご実家の『しっくり感』ね… ケンジの人格を育んだ環境、これ以上ない「わかりみ」ですよね ケンジの母ちゃんかっこいいんだ… 「知り合いの泥棒みたいなもん」、原作でも印象深かったこの台詞、ばしっと言っててすごくかっこよかった…

しかしハコヅメのドラマでも思ったけど、基本1話完結型のお話を1本の物語に纏める脚本の方は凄いですね…

「死ぬの!?」っていう笑いとる場面をひっくり返してシロさんでもやってきたの、構成の妙…と思ったし、シロさんの「死ぬのか…!?」が悲壮すぎて笑いながら泣けてしまった DINKSが相手に先立たれることの恐怖…他人事じゃねえんだ……

ホント年齢的に全然他人事じゃない問題が盛りだくさんで、この映画すごく面白いしクスッと笑えるししみじみといい映画だったな~って思えるんだけど、それだけじゃなくてこう、身につまされるというか、ああ自分もちゃんと考えなきゃなあって思うことがたっくさん入ってるんですよね… 親のこと、住む家のこと、老いていく身体、もろもろ

歳をとると、絶対に誰の身にもいろんなことが降りかかってきて、たとえ子どもがいて孫がいて地位もあってはたから見たら一見幸せそうでも、「会いたくないんだって」ってりんごを片手にドライに言う所長の姿とかもあったり…何も悩みのない人なんかいない… 

なんかラスト近くのお花見の場面で(原作では昼間に一緒にお花見をした)佳代子さんご一家が川の向こう側にいて、赤子連れで「筧さんまた今度ね!」って手を振っていて、その人たちは近くて遠い、触れない向こう側で笑っていて、こちらも笑って手を振った後に、ケンジの待つ二人だけのお花見の場に向かう、っていうのが象徴的だった気がする…

二人が満開の桜を見上げながら言う言葉が「なんだかんだで俺たち幸せだね」じゃなく「あーあ俺たち歳とったなあ」なのが、このハッピー大爆発!でない映画の締めくくりなの、美しすぎるな…

そうなんだよ、現実に「二人はいつまでも平和に暮らしましたとさ、めでたしめでたし」なんていうハッピーエンドはなくて、一見ハッピーエンドに見える場所で、いちいち大騒ぎするほどでない些末な面倒ごとや、ちょっとした嫌な出来事なんかに見舞われながら、それでもわたしたちは生きていくんだという気持ちで… なんかもう、映画を観たというよりケンジとシロさんの人生の一部分を覗かせてもらったみたいな、そういう気持ちでじんわりしながら映画館を出ました すごくよかった…

続編もぜひドラマでお願いしたい… 次はケンジのご家族に会うとことかいろいろ、もう原作がラストを迎えたらちゃんとドラマもそこまでやってほしいですね

制作陣の愛を感じました 雑記みたいになっちゃったけど いい映画をありがとうございました