帰れま10から帰ってきました

初の一日二更新。

帰れま10が終わり、無事に二人の友人は読書を終えて帰宅していった。わたしは明日ザファを観に行くので、できるだけ今のうちに――熱の冷めないうちに――ブルジャシュプリームの感想を書いてしまいたいと思いキーボードを叩いている。

シュプリームはやばかった。一気に読めてとても幸せだったが、もう最初から読み返したい気持ちになっている。最高のロードムービーを観た後のような清々しさである。

最初はバラバラだったバンドが、突然ヨーロッパツアーに放り込まれ、ボロのバンであちこち回りながら徐々にまとまっていく。ライブとライブの間に車内で色々話したり、町を歩いたり、安いごはんを食べたりして、バンドは強くなっていく。わたしたちの宮本大も、どんどん強くなっていく。最初来たばかりのときにできなかったことを次々とクリアし、英語も上達して、最後にはメンバーと激しく口喧嘩をすることができるようになったり、ブッキング調整やギャラの管理もできるようになって、今のバンドを「卒業」していく。

大がバンドメンバーに、ヨーロッパのジャズファンたちに愛されていく過程が手に取るように分かる。大はいつまでも変わらない少年のような初々しさと、不遜な野心家である面と、誰より現状を俯瞰して見れる大人な面を持ち合せていて、そんな大のままみんなに愛されるようになる。メンバーたちもみんなそれぞれに悩みながら、自分のプレーを磨き、バンドとして成長していく。彼らを助ける周りの大人たちも皆すごく魅力的で、大は人に恵まれるなあと思うのだが、それは彼がただラッキーなのではなくて、大が自らが愛されるべきプレイヤーであることを大人たちに正しく伝えていった結果であるのが頼もしい。彼は目先の利を追うことをせず、常にバンドメンバーのことを考え、最適解を模索し続けた結果、優しい人たちの手引きを得て未来をつかみ取っていく。

彼はそれを自分だけのものにはせず、旅先で出会った高校生バンドや幼い少年に、ちゃんと返していく。大が旅先でたまたま知り合った少年が、大のお陰でジャズに目覚め、彼らのCDを手に取り、ジャズフェスで大たちのライブを真剣なまなざしで見つめ、彼を覚えていた大とハグをする一連の流れが、本当に最高だった。そこの場面で、かつてブルーノが好きだったミュージシャンに楽屋から出てきてもらえなかったエピソードが昇華されるような描写が挟まることに一番グッときた。

あんなに音でケンカしていた、主張が強くて理解し合えなかったバンドが最後には演奏中に心が通じ合い、お互いを正しく理解し合えたのは最高だった。最初から好きな奴じゃなくても、むしろ嫌いな奴だったとしても、お互いをリスペクトして困難を共に乗り越えた末に真の絆を手にする、まるで友情努力勝利の方程式のようだけれど、彼らが重ねた日々を共に駆け抜けたから、彼らは最高のパートナーになって、だからこそさよならなんだね。と読者のわたしたちでも理解できる。

どのライブも素敵だったけど、作中に出てきた3つのフェス、特に一番最初に彼らが出演した、小さな町の手作りのジャズフェスのシーンはどれも本当に素晴らしくて、いいことしか起こらなくて本当に嬉しくてニコニコしてしまった。あと、わたしはロックが好きなのでロック畑の人たちがジャズバンドの演奏を掛け値なしに楽しむ描写が嬉しかったです。

はー。面白かったー。早くエクスプローラー読みたい。